疲れやすい、眠気がある、頭がぼんやりする、力が出ない、そして常に睡眠不足のように感じる。多くの人は、仕事が忙しい、または休息が足りないせいだと思うかもしれません。しかし、十分に睡眠をとっても症状が改善せず、特に体重増加、寒がり、皮膚の乾燥、便秘などを伴う場合、これらは甲状腺機能低下症(Hypothyroidism)のサインである可能性があります。
甲状腺機能低下症とは?
甲状腺機能低下症とは、甲状腺が体の必要量を満たす十分な甲状腺ホルモンを産生できない状態です。甲状腺は首の前側にある蝶のような形をした器官で、エネルギーの利用、体温、心拍、脳や筋肉の働き、その他のさまざまな身体機能の調節に関わるホルモンを産生しています。
甲状腺ホルモンの濃度が低下すると、体内のさまざまな働きが遅くなります。そのため、患者さんは、十分に休めていない人のように、無気力、疲労感、思考の低下、力が出ないなどの症状を感じることがあります。
甲状腺機能低下症の症状は、本当に睡眠不足の人と似ているのでしょうか?
一部は当てはまります 。どちらの状態でも、疲れ、眠気、集中力の低下、物忘れ、気分の落ち込み、日常の活動を十分に行えないなどの症状が現れることがあるためです。
ただし、睡眠不足による疲れは、睡眠時間や仕事量と関連していることが多く、十分に眠ると改善する場合があります。一方、甲状腺機能低下症による疲れは、十分に睡眠をとっても続くことがあり、ほかの異常な症状を伴うことが多いです。
この見分け方は、あくまで初期評価の参考となるものです。甲状腺機能低下症の症状は、ほかの病気や健康状態ともよく似ているため、症状だけで診断することはできません。診断を確定するには血液検査が必要です。
単なる睡眠不足ではない可能性のある症状をチェック
甲状腺機能低下症の症状は人によって異なり、すべての症状が現れるとは限りません。よくみられる症状は次のとおりです。
- 疲れやすい、倦怠感、眠気、または力が出ない
- 原因不明の体重増加
- 寒がり、または寒さに弱くなる
- 思考や反応が遅くなり、物忘れしやすい
- 悲しい気分、落ち込み、または意欲の低下
- 皮膚や髪の乾燥、髪が薄くなる、または抜け毛の増加
- 便秘
- 筋肉痛、関節痛、またはこむら返りが起こりやすい
- 心拍数の低下
- 月経量が多い、月経不順、または不妊の問題
症状は通常、徐々にゆっくり現れます。そのため、数か月から数年にわたる変化に気づかない患者さんもいます。
睡眠不足と甲状腺機能低下症は、どのように違うのでしょうか?
| 見分けるポイント | 睡眠不足 | 甲状腺機能低下症 |
| 疲れ | 睡眠不足や仕事のしすぎと関連することが多い | 十分に眠っても疲れが続くことがある |
| 休息後 | 十分に眠ると改善することが多い | 症状が明らかに改善しないことがある |
| 随伴症状 | 眠気、あくび、集中力の低下、いらだち | 寒がり、体重増加、便秘、皮膚の乾燥、髪が薄くなる、または心拍数の低下 |
| 症状の経過 | 睡眠のスケジュールに応じて変化する | 数か月かけて徐々に明らかになることが多い |
| 確認方法 | 生活習慣や睡眠の質から評価する | 甲状腺の機能を評価する血液検査が必要 |
違いはありますが、この表を使って自己判断で病気を診断してはいけません。疲労感や体重増加は、さまざまな原因で起こる可能性があるためです。
甲状腺機能低下症の原因
よくある原因は橋本病(Hashimoto’s disease)です。これは自己免疫疾患の一つで、体が甲状腺を攻撃する抗体をつくることにより、甲状腺に炎症が起こり、ホルモンの産生量が低下します。
そのほか、甲状腺炎、甲状腺の手術、放射性ヨウ素による治療、首への放射線照射、特定の薬剤、下垂体または視床下部の異常によって起こることもあります。また、ヨウ素の摂取不足または過剰摂取が関係する場合もあります。
特に注意が必要なのはどのような人ですか?
十分に休んでいるにもかかわらず、異常な疲れや無気力を感じる場合は、特に複数の症状がある場合や、次のようなリスク要因がある場合には、医師に相談してください。
- 家族に甲状腺疾患の人がいる
- 甲状腺の病気や異常を経験したことがある
- 甲状腺の手術または放射性ヨウ素による治療を受けたことがある
- 頭部、首、または胸部に放射線治療を受けたことがある
- 出産後の時期にある
- ほかの自己免疫疾患がある
妊娠中の方、または妊娠を希望している方は、適切な評価を受ける必要があります。未治療の甲状腺機能低下症は、母体と胎児の双方に影響を及ぼす可能性があるためです。
甲状腺機能低下症かどうかは、どのように検査するのでしょうか?
医師は、問診、身体診察、血液検査を行い、甲状腺の機能を評価します。よく行われる検査は次のとおりです。
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TSH(甲状腺刺激ホルモン、Thyroid-Stimulating Hormone)
下垂体から分泌され、甲状腺を刺激するホルモンです。一般に、TSH値が高い場合は、甲状腺が十分なホルモンを産生できていない可能性があります。
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Free T4
組織に取り込まれて働く甲状腺ホルモンの濃度を調べる検査です。Free T4が低く、TSHが高い場合は、甲状腺機能低下症の診断を支持する所見となる可能性があります。
橋本病が疑われる場合、医師はTPO抗体など、甲状腺に対する抗体の検査を追加で行うことがあります。ただし、検査結果の解釈には、症状、既往歴、使用中の薬剤、その他の健康状態を総合的に考慮する必要があります。
甲状腺機能低下症は治療できますか?
甲状腺機能低下症の多くは、レボチロキシン(Levothyroxine) などの甲状腺ホルモン補充薬を服用することでコントロールできます。これは、体内で不足しているホルモンを補うものです。適切な薬の量は人によって異なるため、医師の指示に従って服用し、定期的に血液検査を受ける必要があります。
服薬開始後または薬の量を調整した後、医師は通常、約6~8週間後に血液検査を行い、ホルモン濃度が適切かどうかを確認します。自分の判断で薬を中止したり、増量・減量したりしてはいけません。ホルモンが過剰になると、不整脈や骨粗しょう症のリスクが高まる可能性があります。
また、ヨウ素サプリメント、海藻、甲状腺ホルモンを自己判断で購入して服用してはいけません。ヨウ素を大量に摂取すると、一部の自己免疫疾患による甲状腺機能異常が悪化する可能性があります。
疲れを当たり前のことにしないでください
睡眠不足による疲れは誰にでも起こり得ます。しかし、十分に眠っているのに、体の動きが鈍い、疲れやすい、寒がり、体重が増える、便秘、皮膚が乾燥する、髪が薄くなるといった症状がある場合は、年齢のせいや仕事のしすぎだけだと決めつけないでください。
「睡眠不足の人」のように見える症状は、甲状腺ホルモンの異常を知らせるサインかもしれません。適切な検査と治療を受けることで、ホルモン濃度を適正な範囲に戻し、生活の質を改善できる可能性があります。
十分に眠っているのに疲れが取れない場合は、軽視しないでください。時には、体が必要としているのは睡眠時間を増やすことではなく、本当の原因を調べることかもしれません。
